【怖い話】霊柩車

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死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?2より

738 :怖かったので転載:2001/01/15(月) 15:56
Kさんという若い女性が、両親とおばあちゃんと一緒に住んでいました。
おばあちゃんは、元々はとても気だてのよい人だったらしいのですが、
数年前から寝たきりになり、だんだん偏屈になってしまい、
介護をする母親に向かって、ねちねちと愚痴や嫌味を言うばかりでなく、
「あんたたちは、私が早く死ねばいいと思っているんだろう」などと繰り返したりしたため、
愛想がつかされて、本当にそう思われるようになりました。
介護は雑になり、運動も満足にさせて貰えず、食事の質も落ちたために、加速度的に身体が弱っていきました。
最後には布団から起き出すどころか、身体も動かせず、口すらもきけず、
ただ布団の中で息をしているだけ、というような状態になりました。
はたから見ていても、命が長くないだろうことは明らかでした。

さて、Kさんの部屋は2階にあります。
ある晩彼女が寝ていると、不意に外でクラクションの音が響きました。
Kさんはそのまま気にせず寝ていたのですが、しばらくするとまた音がします。
何回も何回も鳴るので、時間が時間ですし、あまりの非常識さに腹を立ててカーテンをめくって外を見ました。
Kさんはぞっとしました。家の前に止まっていたのは、大きな一台の霊柩車だったのです。
はたして、人が乗っているのかいないのか。
エンジンをかけている様子もなく、ひっそりとしています。
Kさんは恐くなって、布団を頭から被りました。
ガタガタとふるえていましたが、その後は何の音もすることなく、実に静かなものでした。

739 :怖かったので転載:2001/01/15(月) 15:59
朝になってKさんは、両親に昨日の夜クラクションの音を聞かなかったかどうか尋ねました。
二人は知らないといいます。
あれだけの音を出していて気づかないわけはありませんが、
両親が嘘をついているようにも見えないし、また、つく理由もないように思われました。
朝になって、多少は冷静な思考を取り戻したのでしょう、
Kさんは、『あれはもしかして、おばあちゃんを迎えに来たのではないか」という結論に至りました。
彼女にはそれ以外考えられなかったのです。
しかし、おばあちゃんは相変わらず“元気”なままでした。

翌日の夜にも霊柩車はやって来ました。次の夜もです。
Kさんは無視しようとしたのですが、
不思議なことに、Kさんが2階から車を見下ろさない限り、クラクションの音は絶対に鳴り止まないのでした。
恐怖でまんじりともしない夜が続いたため、Kさんは次第にノイローゼ気味になっていきました。

7日目のことです。両親がある用事で親戚の家に出かけなくてはならなくなりました。
本当はKさんも行くのが望ましく、また本人も他人には言えない理由でそう希望したのですが、
おばあちゃんがいるので、誰かが必ずそばにいなくてはなりません。
Kさんはご存じのようにノイローゼで、精神状態がすぐれなかったために、
両親はなかば強制的に留守番を命じつつ、二人揃って車で出ていきました。
Kさんは恐怖を紛らわそうとして、出来るだけ楽しいTV番組を見るように努めました。
おばあちゃんの部屋には恐くて近寄りもせず、食べさせなくてはいけない昼食も、そのままにして放っておきました。

さて、両親は夕方には帰ると言い残して行きましたが、約束の時間になっても帰って来る気配がありません。
時刻は夜9時を回り、やがて12時が過ぎ、
いつもの霊柩車がやって来る時間が刻一刻と迫ってきても、連絡の電話一本すらないありさまなのでした。

はたして、その日もクラクションは鳴りました。
Kさんはそのとき1階にいたのですが、間近で見るのはあまりにも嫌だったので、
いつもの通りに2階の窓から外を見下ろしました。

740 :怖かったので転載:2001/01/15(月) 16:01
ところがどうでしょう。
いつもはひっそりとしていた車から、何人もの黒い服を着た人達が下りてきて、門を開けて入ってくるではありませんか。
Kさんはすっかり恐ろしくなってしまいました。
そのうちに、階下でチャイムの鳴る音が聞こえました。
しつこく鳴り続けています。
チャイムは軽いノックの音になり、
しまいにはもの凄い勢いでドアがドンドンドンドンドンドン!と叩かれ始めました。
Kさんはもう生きた心地もしません。
ところがKさんの頭の中に、『もしかして、玄関のドアを閉め忘れてはいないか』という不安が浮かびました。
考えれば考えるほど閉め忘れたような気がします。
Kさんは跳び上がり、ものすごい勢いで階段をかけ下りると、玄関に向かいました。
ところがドアに到達するその瞬間、玄関脇の電話機がけたたましく鳴り始めたのです。
激しくドアを叩く音は続いています。
Kさんの足はピタリととまり動けなくなり、両耳をおさえて、
叫び出したくなる衝動を我慢しながら、勢いよく受話器を取りました。
「もしもし!もしもし!もしもし!」

741 :怖かったので転載:2001/01/15(月) 16:02
『○○さんのお宅ですか』
意外なことに、やわらかい男の人の声でした。
『こちら警察です。
 実は落ち着いて聞いていただきたいんですが、先ほどご両親が交通事故で亡くなられたんです。
 あのう、娘さんですよね?もしもし、もしもし・・・』
Kさんは呆然と立ちすくみました。
不思議なことに、さっきまでやかましく叩かれていたドアは、何事もなかったかのようにひっそりと静まり返っていました。
Kさんは考えました。
もしかしてあの霊柩車は、両親を乗せに来たのでしょうか?おばあちゃんを連れに来たのでなく?
そういえば、おばあちゃんはどうなったのだろう?
その時後ろから肩を叩かれ、Kさんが振り返ると、
動けない筈のおばあちゃんが立っていて、Kさんに向かって笑いながらこう言いました。
「お前も乗るんだよ」

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