死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?34より
17 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/19 04:30
私は蜘蛛が大嫌いです。それこそ、洒落にならない程の恐怖を感じます。何故でしょうか。
これは小学校に上がる前の話です。
兵庫県のSというところにあるマンションに住んでいました。
マンションは敷地内に3棟あったと思います。
私のうちは、そのうちの1棟の、8階の一番奥にある部屋です。
8階には、私と同い年の男の子が私を含め3人いて、
皆仲が良く、いつもマンション内の公園や、敷地内の色々な場所で遊んでいました。
場所によってはガガンボや蜘蛛が沢山いて、気味が悪い。
マンションの背後には大きな山がそびえているせいか、虫がやたらと多いマンションでした。
さて、仲良し3人組とは別に、たまに一緒に遊ぶT君という男の子がいました。
T君はマンションの1階に住んでいて、少し内気な感じの子です。
外に出て遊び回るより、家の中でおもちゃで遊ぶのが好きだったようで、
外遊びが好きな私達とは、1ヶ月に数度遊ぶ程度の仲だったと思います。
18 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/19 04:30
ある時、私一人でT君のうちに遊びに行きました。
マンションの一階は少し薄暗いのです。
さらにその日は曇りだったので、廊下が夜のように暗く、T君のうちに入るまで、かなり心細かったのを憶えています。
T君のうちに着くと、T君とT君のお母さんが出迎えてくれ、ホッとしました。
T君は救急車やパトカーのミニカーを取り出してきたので、子供なりにストーリーを仕立てて、2人で遊んでいました。
しばらく遊んでいて、ふと視線を上げると、
T君の部屋の箪笥の上に、見慣れないおもちゃが置いてあることに気が付きました。
下から見上げる限りでは、レールが立体的に交差した造形しか判別出来ませんが、いかにも面白そうなおもちゃです。
「あのおもちゃで遊ぼうよ」と、T君に頼みました。
するとT君は素っ気無く、
「壊れてるから遊べないよ、○○君が壊したんじゃないか」と言います。(○○君とは私のこと)
吃驚して、「嘘だあ。あんなおもちゃ見たことないよ」と言い返すと、
「この前遊びに来た時壊したじゃないか」と言い張るのです。
全く記憶にない事です。
19 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/19 04:31
ちょうどその時、T君のお母さんが部屋に入ってきて、箪笥に洗濯した服を仕舞い始めました。
「T君が、僕があのおもちゃを壊したっていうんだよ」と、T君のお母さんに訴えました。
「だって○○君、この前遊びに来た時壊したでしょう」と、T君のお母さん。
当時4歳か5歳だったと思いますが、私は3歳位からの記憶がわりとハッキリと残っています。
既に物心ついていましたので、友達のおもちゃを壊したかどうかくらいは判断出来ます。
断じてそんな記憶はありませんし、そもそも、そのおもちゃを見るのは初めてなわけです。
「どうしてそんな事言うの?ぼくは壊してないよ!」
「この前遊んでて壊したじゃないか」
「そうよねえ、○○君が壊したから遊べなくなったのよね」
その時は勿論この言葉を知りませんでしたが、生まれて初めて『不条理』を感じた瞬間だったと思います。
20 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/19 04:31
しばらく必死に記憶を辿って、以前にT君のうちに遊びに来た時の事を思い出そうとしてみましたが、
やはり何も憶えていませんでした。
その場にいたたまれなくなり、自分のうちに帰りました。
私にとってはかなりショックな出来事で、帰宅しても親に話せません。
その後間もなく、私達一家は東京へと引越ししてしまったので、
T君のおもちゃのことは、不可解なままになってしまいました。
その後、私は叔母から誕生日の贈り物に、幼年向けの『ファーブル昆虫記』をもらい、
大変に気に入って何度も何度も読み返していたので、虫がとても好きになりました。
引っ越した先は東京にしては自然が多い地区でしたので、外に出ては色んな虫を捕まえて遊んでいました。
ただ、どうしても蜘蛛だけは好きになれません。
好きになれないどころではない、蜘蛛の事を考えるだけで身の毛がよだつ思いがします。
ファーブル昆虫記にも蜘蛛の話は載っていて、お話としては非常に面白いのですが。
小学校、中学校、高校と、いつまでたっても私の蜘蛛嫌いは直りませんでした。
23 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/19 04:33
ある日、幼い頃育ったマンションでの日々について、母親と思い出話を語ることがありました。
色々懐かしく思い出しながら話しているうちに、
「お前は今でも蜘蛛が大嫌いだけど、子供の頃は本当に酷かった。
夜中にいきなり、『蜘蛛は嫌だーっ!』って叫び始めるんだよ」
先に書いた通り、私は自分ではわりと小さい頃の記憶がある方だと思っている。
でも、夜中に泣き出したという記憶は全然ないわけです。
母親が語るには、私の泣き叫ぶ様があまりにも真に迫っていて、
まるでそこに本当に蜘蛛がいるかのように怯えていたそうです。
寝ぼけたという様な生易しいものではなく、錯乱状態といってもよいぐらいで、気でも違った様に見えた。
そんなことが何度も続くので、病院に連れて行った方が良いのではと、悩んだほどだそうなのです。
24 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/19 04:34
そこで少し、自分の記憶があやふやになってきました。
いくらなんでも、そんなことがあったら憶えているんじゃないか?でも全く憶えていない。
ハッとしました。こういうことは前にもあったなあ。
そうだ、T君のおもちゃのことだ。
そこで何か思い出しそうになり、T君の薄暗い部屋のイメージが、頭の中にフラッシュバックしてきました。
でも、はっきりと思い出す前に、記憶の糸がフッと途切れてしまい、それ以上は思い出せません。
その時母親が、
「あのマンションは裏手が山だったから、大きな蜘蛛がたまに出たんだよねえ。大人の手くらいあるやつ。
あんな大きな蜘蛛、子供が見たら、すごい大きさに見えるだろうねえ」
と言いました。
25 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/19 04:35
その瞬間、私の頭の中に幾つかのイメージが同時に駆け巡り、気が付くと私は頭を抱えてウゥと唸っていました。
すんでのところで叫び声を抑えていました。
T君の部屋で走り回っている時に転んで、あのレールのおもちゃの上に倒れこむ瞬間
床を叩きながら泣いて私を非難するT君
T君に、「どうすれば○○君を許す?」と聞くT君のおかあさん
T君のおかあさんが、彼女の手より大きな蜘蛛をつかんで
僕の口に
感触が!
26 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/19 04:36
私の母親は驚いたことでしょう。
私は逃げるように自分の部屋まで走り、そのまま布団をかぶって、頭の中に蘇ってくるイメージを消そうともがきました。
その日は朝まで眠れずに記憶と葛藤し、
その後数週間は、日常生活の合間に蘇ってくる記憶に苛まれ続けました。
なにしろ人と会っていても、いきなり頭を抱えてうめき始めるわけです。
頭がおかしくなったと思った人もいたでしょう。
「蜘蛛を食べれば、許す」
「じゃあ、蜘蛛とってくるね」
冗談かと思いきや、数分も経たぬうち戻ってくるT君のおかあさん
「廊下に巣を張ってる蜘蛛を取ろうと思ってたんだけど、すごい大きな蜘蛛がいたからそっちの方を取って来た」
「うわっ、でっかー!」
「ほーら○○君、食べなさい」
今では分かる。
T君の母親は、本気で蜘蛛を食べさせようとしたわけじゃない。
でも、彼女の目は、加虐の喜びに満ちていた。
彼女はひとしきり大きな蜘蛛を私の口のまわりになすりつけると、ひょいと窓から蜘蛛を捨て、
「おかあさんに言っちゃだめよ!」と、恐ろしい顔をして言った。
そしてT君にも、「これで○○君を許してあげなさい!」と叱りつけた。
これが私の、蜘蛛を嫌いになった理由です。
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