【怖い話】大無間から光へ

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死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?150より

144 :本当にあった怖い名無し:2006/11/24(金) 02:45:45 ID:BuDZE9RqO
大無間から光へ。これが一発でわかる奴は山が好き。
けど、行った事のある奴は少し変態かな。このルートはそんな所だ。
これは2001年夏。その山行の終盤、加々森から光へ抜ける時の話。

加々森は陰欝なピークだ。見晴らしがきかず、暗く寂しいから、留まるような場所じゃない。
友人と二人で来てみたものの、鹿の骨が散乱する暗い深南部の森もいい加減厭きてきてたし、
会社に休みを延長してもらって、明るい聖まで足を延ばそうかなぁなんて思いながら、
ほとんど加々森には立ち止まらず、先へ進んだ。

起伏が連なり、ほとんど消えかけた道をしばらく進んでいると、やがて急な下りに。
先行した友人が舌打ちをして止まる。
「うわ、わりぃ。ルート間違えた」
地図を見ると、確かにこんなに下っていない。
光岩へ右に行く所を直進してしまい、尾根をかなり下ってしまったようだった。
溜息をついて戻ろうとしたが、ぬかるんだ急斜面。ずるずるに滑って、上るのは結構骨が折れそうだった。
「まぁ、場所はだいたいこの辺だから、少しトラバースして、上りやすいとこから行こうや」
なんとなく萎えた気持ちのまま、しばらくトラバースすると急に開けた場所に出た。
紫の原っぱ。窪地いっぱいに広がるミヤマトリカブト。素晴らしくきれいだった。
こんな場所があったのかぁ。見回せば、この窪地から上へ小さい道が続いている。
誰か知ってて来る人もいんのかなぁ?とりあえずルートに戻れそうだ。俺は少しほっとした。
その時、トリカブトの群落から派手な合羽のおばさんがすうっと出てきた。
「助かるわぁ。道に迷ったんです。お兄ちゃん光まで連れてって」
友人が震えているのが不思議だった。

148 :本当にあった怖い名無し:2006/11/24(金) 03:22:58 ID:BuDZE9RqO
「まぁ、ルートはこの上だと思うんです。この道悪いかもしれんけど」
俺たちも迷ってしまった事は棚にあげて、俺は自信満々だった。まぁ、現在地もだいたい把握できてたからだと思う。
「じゃあ行きますか?」
ところが、俺が先に行こうとした途端に友人が俺の腕をひっつかんで、絞りだすような声で呻いた。
「俺たちは後から行くから、先に歩け」
おばさんは少しお辞儀をして、先に上る道を上がっていった。
が、遅い。たいした坂でもないのに這いずるような格好で辛そうに歩く。
あまりに遅いペースにいらだち、
『先に行ってルート見てくるから、おばさん後からゆっくり来なよ』って言おうとした瞬間、友人が俺につぶやいた。
「こいつに後からついてこられるのは嫌だからな。絶対見える所がいい」
なんとなく気持ち悪くなってきた。
このおばさんはどこに行くつもりだったんだ?
光より南から、こんな装備で来たはずない。光から来たなら、こんなとこには来ない。
おばさんはなんだかぐにゃぐにゃと上っている。
「ねぇ。どっから来たんですか?」
俺の問いには一切答えずおばさんは言った。
「前。代わらない?」
「代わらない!行けよ!」
友人が怒鳴る。
「前。代わらない?」
ぐにゃぐにゃのろのろ歩くおばさんの後をしばらく上った。
四、五回同じ問答をしたと思う。
俺はいつの間にかすっかり、怯えていた。
だが、ぐいっと急斜面を上ると突然本道にでた。
あぁ、良かった。戻ったぁ。」
と思った瞬間、バキン!!と音をたててオバサンの首が直角に曲がったんだ。
そんですぅっとさっきの道を下りていった。
俺は怖いというより驚いて、硬直したまましばらく動けなかった。
その後は、光小屋までものすごいスピードでいったよ。

友人はその晩言った。
「おまえ合羽のフードの中の顔見た?目も鼻も口の中も全部土がいっぱいに詰まってたぞ。
 あんなのにぴったり後ろついて歩かれるのは、俺は絶対に嫌だね」

まぁ、そんだけ。下手な文ですまない。
俺は山は好きだけど、あれから光より南は行ってないなぁ。

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