【怖い話】自転車旅行

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死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?29より

225 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:10
これは私がまだ学生だった頃、今から7年前に体験した話です。
いまだにこの記憶は脳に刻み込まれており、風景、言葉、感情等、詳細に至るまで、思い出す事が出来ます。

夏休みを持て余していた私へ、友人Yから『暇だから旅行に行かないか?』との誘いの電話が入った。
暇はあっても金は無い。でも海で10日は遊びたい。
そんな私達が考えついた旅行のプランは、“砂浜で野宿、ママチャリの旅”だった。
つまり、私達が住んでいる東京から、買い物自転車(通称ママチャリ)で千葉の九十九里浜まで行き、
各地の砂浜で野宿しながらひたすら北上。
目指すはリアス式海岸ってな計画だった。
とりあえず電話で持ち物分担を話しあい、どうせ暇だから明日から出発しようという事になった。

午前11頃、出発。
記念にと、使い捨てカメラにて写真を1枚。
そして、歌舞伎座前など要所要所で写真を撮りながら、東京を脱出したのが午後3時過ぎだった。

急遽決まり、計画も杜撰な旅行だった為か、早速1日目から問題が勃発した。
夜8時頃、千葉県四街道に差し掛かったあたりで道が判らなくなり、Yが用意してきた地図を見たのだが、
何を考えているのか、Yが持ってきた地図は『東京23区マップ』。
もちろん、千葉県の地図など載っておらず、まったくもって役立たず。
あきれ果てたが、Yと付き合ってく上で毎度の事なので、
まぁ人に聞いたり、コンビニで地図を見たりしながら行けば良いかと笑って済ませた。
というか、笑いが止まらなかった。

226 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:12
私達は、私が持参したコンパスを頼りに、ひたすら東に向かった。
コンビニも見つからず、ガソリンスタンドも営業時間を終了しており、道を人に聞くことが出来ずに進んでいた。
不安に思いながらも進んでいると、
青看板の道路表示で、200m先で旧××道にぶつかり右折すると八日市場という所に向かえる、と示していた。
八日市場は大学の友人の実家がある町で、九十九里浜より北上した所に位置する町と知っていた為、
喜び勇んで私達は右折した。

旧××道は上り坂が多く、ママチャリの私達は立ち漕ぎで上らなければ辛い所も多々あった。
時計を見ると9時を過ぎており、私達は体力的にも精神的にも余裕が無くなりつつあった。
判断力が薄れ、Y字があると、看板も見ずに太い道の方を選択するようになっていた。
気付くと車通りは無くなり、両側は林、民家も無く、街灯と街灯の間隔も広がり、明かりが少なくなってきた。
直前のY字からは既に40分以上は走っており、引き返す気もならなかった。
たまに上空を成田へ向かう飛行機が飛んでおり、ジェット音が聞こえる。
その音が不安感を払拭する手伝いを多少していた為かもしれない。

227 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:12
さらに40分ほど走っていると、それまで談笑しながら女の話などをしていたYがマジな顔になり、
「この道やばくないか?なんだか、道が狭くなり出した気がするんだよなぁ」と言いだした。
確かに道路の幅も狭くなり、道の舗装も荒れ始めていた。
「あとさぁ。途中からまったく標識ないよなぁ。おまけに車がまったく通らないのってヤバくねぇ?
 おまけに、長すぎだろう。何で交差点がねぇーんだよ」
私も流石に不思議に思ったが、基本的に気楽に考える性質なので、
「私道に入っちまったか?でも、こんだけ長い一本道が、行き止まりって事も無いだろ?
 それに、こっちの方の道なんて、こんなもんじゃねぇーの?」
と言い返しておいた。
そうするとYが、
「やっぱりこの道おかしいよ。民家もねぇし、静か過ぎるよ。
 飛行機の音って最後いつ聞いた?間隔が開きすぎだろう。
 道路が荒れてるからかも知れないけど、なんだかペダルが重いよな?つーか重すぎねぇか?」
そう言われると、なんだかおかしい気がしてきた。
確かに、よく聞こえていた飛行機の音がしない。
おまけに、平らな道を走っているのに、ペダルが妙に重い。
しかし、それに同意するのも癪に思い、私は、
「両側が林なんだから、民家が無いのも当然だろ。
 もしかすると、うちらが見落としているだけで、民家もあったかも知れないし。
 飛行機だって、この時間は本数が減るんだよ。もう11時過ぎてるしさぁ。
 流石にこんだけ走り続けてりゃー、疲れてペダルも重く感じるよな」
Yは納得がいかないようだったが、「・・・そうだよな」と答えた。
すでにひたすら真っ直ぐの一本道を1時間半以上も走り続けていた。

228 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:13
なんだか場が暗くなり、私も急に不安になってしまったので、とりあえず歌う事にした。
当時の流行歌や、幼少の頃のアニメソング。
Yも流行歌は鼻歌程度だったが、アニメソングの頃には歌い出した。
『ガンダム』を歌う頃には、2人で大声熱唱状態だった。
Yの、自転車を漕ぎながら熱唱する姿が妙に笑えた。
私は走りながらポケットからカメラを取り出し、大口で歌うYの姿を写真に収めた。
そして恥ずかしいのだが、『魔女っ子メグ』を熱唱。
2人で大声で歌いながらペダルを思いっきり漕ぎ、
「シャランラァ~!!」と絶叫しながら坂を登りきった時だった。
20mほど先に、白い服を着た女の人が道の左側を歩いていた。
その女性の後姿は、白い服を着ていた所為か、暗い道にもかかわらずはっきりと見えた。
私は『わっ、今のシャランラァー絶対に聴かれた!恥ずかしーっ!』とまず思った。
私はYに「あそこに人が歩いてるな」と話し掛けると、Yは「えっ?」と言い、
右斜め後方を走っていたYも恥ずかしいと思ったのか、女性と反対側の右側へふらりと寄った。
その女性は、デビュー当時の聖子ちゃんのように内巻のヘアスタイルで、
ふわりとした感じの白いロングスカートに、レースの入った白い長袖のブラウスを着ていた。
私は『おいおい、なんちゅー服のセンスに髪型だ?だれかの結婚式の帰りか?』と思った。
ちょうど女性の脇を通りすぎる時、私はYに「道を聞こうよ」と言うと、
Yは「うっ?!」っと驚いたような、そして困ったような表情で返事をした。

229 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:14
私は即Uターンした。
綺麗な人だったら良いなぁと思いながら、その女性に「海岸に出たいんですが、どう行けば良いですか?」と聞いた。
私の想像通り綺麗な人だった。 可愛いというタイプではなく、綺麗系のタイプだった。
それゆえ私は、
『服装と髪型が似合ってないなぁ。でも、綺麗だぞ。この子と話し込みたいなぁ。
 でも、うちらブサイクだから相手にされねぇーかな?』
なんてな事を思った。
私は下心丸出しで、かなりジロジロと見ていたと思う。
表情が暗いなぁと感じ、『不信人物と思われてる?』とちょっと心配になった。
なかなか返事を返してくれない。
二呼吸ほどの静寂。
彼女は進行方向をゆっくり右手で指差す。
視線の端の方で、Yが一踏み程ペダルを漕いで少し進み、止まるのが見えた。
彼女の口がゆっくり開く。
「・・・突き当たりの・・T字を・・・右に行けば・海に出ます・・・」
蚊の鳴くような細い声で、ゆっくりと、ぽつりぽつり返答が返ってきた。
怖い。話し方が怖い。声が怖い。彼女の口が妙に怖い。
そして、この時やっと私は、彼女がここにいる事に対して不信に思う。
車はまったく通っていない。
民家も無ければ自販機も無い。
彼女は手ぶらだ。
時間は既に11時半頃。
女性が一人で歩いている。

230 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:15
この現状に、何か理由が欲しいと思ったのかもしれない。
彼女は体が透けてないから、お化けや幽霊じゃない。 (私は、幽霊は体が透けて見えるモノ、という先入観がありました)
ゆえに、彼女はレイプされて車から捨てられたんだ、というストーリーを考えた。
しかし、彼女の髪や服装は乱れていない。
そうだ、彼女は彼氏とケンカして、そいつは酷いヤツで彼女を置き去りにした。
道を知っている事を考えると、この先しばらく行った所に彼女の家があるはずだ。
そうだ、きっとそうに違いない。だから落ち込んでいる彼女は暗いんだ。
私は彼女に、とりあえず「大丈夫ですか?」と声を掛けた。
また、すぐに返答が帰ってこない。
振り返ると、Yの自転車がゆっくりと進みだしていた。
彼女の口がまたゆっくりと開く。
「・・・右です。・・・右に行って下さい。・・・右」
その瞬間、
「ひぃぃっ!」
Yの引きつるような声が聞こえた。
そして、急にYの自転車が加速した。

231 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:15
私は慌てて彼女に大声で礼を言い、全力で走るYを追いかけた。
ふと、後ろが気になり振り返った。
50m程後方にいる彼女は、微笑んでいるように見えた。
私はなぜか彼女の微笑みを見て安心し、心を落ち着かせる事ができた。
私は『ありがとう』の意味を込め、彼女に大きく手を振った。

Yは遥か前方を走っていた。
きっとYは彼女を幽霊だと思い込んでいるんだと思うと、Yの肝の小ささに笑えてきた。
Yの臆病さを馬鹿にしてやろうと全力で追いかけたが、なかなか差が縮まらない。
10分ほど走ると、Yはスピードを落としたのか、もう少しで追いつけそうになった。
Yの前方を見ると、彼女が言っていたT字路が見えた。
T字は、右が下り坂で、左は上り坂だった。
正面に看板があり、左に曲がるとゴルフ場があるようだ。
3mほど前方を走るYに、私は「そこを右だぞ!右!!」と声を掛けると、
Yは振り向かずに、「あぁ、そっちがいい。右だ!右にしよう!」と答えた。
私はYのおかしな返答に疑問を持った。
確かに彼女は『T字を右』と言っていたはずだ。
声は小さかったが、あの音の無い場所では、Yにも彼女の声がちゃんと聞こえていたはずだ.

232 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:16
YはT字を右折しながら振り向いた。
視線が私から私の後方へずれて行く。
振り向いた顔が一瞬こわばる。
「なあぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!」
Yが大声で叫びながら坂道を下りて行く。
その大声にビックリした私も、T字を右折しながら振り向いた。
何も無い?
私も振り向いたまま、自転車は坂道を下り始める。
T字の街灯の光に何かが入って左の方へ抜けた。
何?靄?影?プレデター?
・・・判らない。なんだか判らない。
イノシシのようなモノの形で光を遮り、その形で空気が歪む。
そして、それは滑るように左折して坂道を登って行った。
見えたのはほんの一瞬。
私も全力で自転車を漕いだ。
怖い!怖い!怖い!
ついに見た!初めて霊(?)を見た!
Yが見たのはこれだったと理解した。
Yには私が彼女と会話している時から、彼女の側らにいるアレがはっきりと見えていたのだ。
あれは彼女に取り付いていたモノだったのか?
だから彼女は暗く、言動がおかしかったのか?
一気に今までの事を理解した気になった。
体が震えてる。
その時、急にペダルが軽くなった。

233 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:17
目の前に、広い道路と交差する十字路が見えた。
交差点にラブホテルの看板があった。
『左折1km』
Yが怒ったような声で私を大声で呼んだ。
「おい!今日はラブホに泊まるぞ!絶対に泊まるぞ!」
2人は同時に左折した。
上り坂だったが、やはりペダルが軽い。

ラブホテルの駐車場にママチャリを2台停め、荷台にカバンを括り付けていたロープを一気に解き、ラブホに飛び込んだ。
受付は男性だった。
「自転車旅行中に体調が悪くなったので泊めて下さい!お金はあります!」
受付の男性は、「自転車?若いなぁ」と呟き、笑いながら、
「男同士は基本的にダメなんだがな、いいぞ。5800円だ」と、快くOKしてくれた。
私達は2400円づつ払うと、男性は布団一式と目覚し時計を用意してくれた。
そして「特別に一番高い部屋に泊まらせてやる」と言い、私達は最上階にあるメチャ広い部屋に通された。
受付の男性が、部屋を出る時にビニール袋を置き、
「これはやる。あと、好きな時間にチェックアウトしていいぞ」と言い残し出て行った。
ビニール袋の中身は、缶ビール(500ml)4本と菓子パン数個だった。

234 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:18
明るい光の中で見たYの顔色は、真っ青というか、ダンボールのような色をしており、表情は怒りに震えているようだった。
2人は無言でビールを開け、一口飲んだ。
その途端、Yは溜まっていたもの一気に吐き出すように捲くし立てた。
「お前だ!お前が悪い!何を考えてるんだ?!信じられない、馬鹿だ!!お前の所為だからな!!!」
酷く興奮したYに、私はなだめる様に話し掛けた。
「だって、あんなのいるなんて知らなかったからさぁ。あの女が・・」
私が話すのを遮るように、Yがさらに捲くし立てる。
「女?なんだ?あれは、ババァだったか?!ババァのお化けか?!
 それとも、単なる黒いボロ布をかぶった普通のばあさんか?
 いや、普通のばあさんが、あんな速度で追いかけて来れる訳ねーだろ!
 お化けか?!幽霊か?!つーか、人間の形じゃねーだろ?!
 あんななんだか判らないモノに声を掛けるなんて、お前はキチ○イだ!!
 おまけに、なんだアレの声は!『左だぁ!左だぁ!』って叫びやがって。
 アレの声が響くたび、頭が割れるようだったぞ!!
 あそこで右に行ってなかったら、絶対殺されてたな!!つーか食われてた!!
 お前が偉かったのは、あそこで右に曲がった事だけだ!!」
Yは肩で息をし、缶に残ったビールを一気に飲みほした。

235 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:18
ババァ?黒いボロ布?『左だぁ!』と叫ぶ?
私はYが言ってる意味が判らず、きょとんとしていた。
私が見たのは白い服を着た若い女性で、『・・・右です』と消えそうな声だったはず。
おまけに彼女はかなりの美人で、瞳だって・・・えーと、目は・・・ん?
あれ?どんな目だったか思い出せない・・・。
大きな二重?切れ長な一重?
鼻は?口は?
髪型や服装は思い出せるのに、肝心な顔がまったく思い出せない。
たかだか20分前に見た人物の顔が思い出せない。
あんなにジロジロ見ていたはずなのに・・・。
も・・・もしかして彼女も??
そんな訳は無い!だって、彼女は透けてなかった。
あんなにハッキリ見える幽霊っているのか?
背筋を冷たい汗が流れる。

236 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:20
私の頭は錯乱していた。そして、錯乱した頭で考える。
Yが見たのは“黒い何か”で、私が見たのは“彼女”だった。
Yには“黒い何か”が『左』と言い、私には“彼女”が『右』と教えた。
左へは“黒い何か”が駆け上り、右に来た私達はラブホでビールを飲んでいる。
もしあの時に左行っていたら、私達はどうなっていたのか?
判るのはこれだけだったが、この事をYには言ってはいけないような気がした。
何も言わない私にYは罵声を浴びせ続けたが、
「ごめん」と一言Yに謝ると、Yは急に落ち着いたようで、「風呂にでも入るか」と立ち上がった。

6人で入れるような風呂に、ビールと持参したウイスキー(ダルマ)を持ち込み2人で入り、
無言でダルマが空になるまで湯船に浸かった。(1人になるのが怖かったので)
風呂から上がった私達はモロ泥酔状態で、いつ寝てしまったのか、気付くと朝になっていた。

237 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:21
~後日談~
次の日、Yは妙に元気がよく、朝からエロチャンネルを見てはしゃいでいた。
元気なYは、「早く海が見たいなぁ」とやる気マンマンで、ラブホを飛び出すように出て、私達は海へ向かった。

旅行中、私は意図的にあの時の話をしなかった。
結局旅行は、茨城県大洗海岸まで数日かけて行き、そこで4泊した後、行きと違うルートで東京まで数日かけて帰った。

旅行の3日後、『現像に出していた写真が出来た』とYから連絡があり、
旅行の思い出話をするため、Yとファミレスで待ち合わせた。

私は自転車のルートを一緒に確認したかったので、関東マップを持参していた。
私達は、写真を一枚一枚撮った場所を関東マップで確認しながら、その時の話を笑いながら話し合った。
私は写真をめくる度、あの時の恐怖が鮮明に思い出されて来ていた。

238 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:22
私の手に持つ写真は、千葉駅付近のパルコ前で撮った写真。
この写真をめくると、次の写真は、アノ時のYが大声で歌っている写真が出るはずだ。
私の手は少し震えており、写真をめくるのを躊躇していると、Yがあっさりと写真をめくった。
次に出てきた写真には、朝ラブホの前で満面の笑みのYと引きつった笑いの私が写っていた。
あれ?あの時の写真が無い!
私はYに、あの時の写真が無いことを告げると、
Yは「あの時?歌ってた?」と、何を言ってるか判らないという素振りを見せた。
私は「1日目の夜中に、道を聞いて怖い思いをしただろ?」と言い、
千葉県内陸のページを広げ、あの時のあの道を探した。
道はあったが、どうもおかしい。地図上の距離が短いのだ。
あの時、一本道を2時間以上走り続けたはずだ。
なのに地図では10km程度しかない。いくらなんでも短すぎる。

239 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:23
そんな私に、Yは「1日目に道なんか聞いたっけ?」と答える。とてもとぼけてる風ではない。
私は「覚えてないのか?」と言い、地図をYに向け説明した。
「この辺りで、お前の地図を見たのが8時頃だろ。この旧××道に入ったのは9時頃。
 ここまでは、覚えているか?」
Yは「そう!そう!」とうなずき、使えない地図を持ってきた事を笑いながら謝った。
私はさらに続けた。
「で、ラブホがあったのはこの辺だろ。ラブホに着いたのは何時頃だった?」
Yは頭を掻きながら、「たしか、12時過ぎてたよなぁ」と言い、首をかしげた。
私は、
「俺達は、この間の3時間何をしていた?たったこの距離を、3時間もかけて走ってたんだぞ!
 1時間で行けるような距離を、3時間かけて走り続けてたんだぞ!
 その間の事を覚えてないのか?その時の事を、ラブホで俺に怒りまくっただろ?!
 いいから、ちょっと写真のネガを見せてみろ!!」
Yは「俺、3時間も何をやってたんだ?なんで、俺はお前を怒ったんだっけ?」と呟きながら、写真のネガを取り出した。
私はネガを窓にかざした。
そのネガには不自然な所があった。
パルコ前での写真とラブホ前での写真、その間にある写真1枚分の空白。
1枚分だけ感光してしまったかのように、綺麗に真っ白だった。

240 :ガッツ☆いちもつ:03/03/02 22:26
あの日、私だけが見た“彼女”の姿。Yだけが見た“黒い何か”の姿。
あの日の出来事を立証する物は、Yが持つ“1枚分感光してしまったネガ”と“私の記憶”のみとなった。

あれから7年以上経ち、先日結婚式にて久しぶりにYと会った。
2次会であの日の話題を出したが、Yの記憶は封印されたままだった。

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