死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?301より
862 :本当にあった怖い名無し:2012/08/20(月) 12:55:47.78 ID:JkHQcFYY0
俺が去年に体験した話。
当時はすごく怖かったんだけど、今考えてみると何か不思議な体験だった。
美容師になって4年目、新人の技術指導で休日出勤してた日だった。
その日は本来休みじゃなかったんだけど、店長が里帰りするっていうので1日だけ臨時休業になった日だった。
技術を競い合う様々な競技のコンテストが間近に迫ってて、
俺の勤めてる店は新人もベテランも皆強制参加しなければならない。
そこで良い成績を取れれば店からちょっとしたお小遣いが貰えたりするので、
自主的に休日出勤をして練習を繰り返していた。
といってもたかが数ヶ月~1年休みに練習したくらいで新人が入賞出来るわけもなく、
だいたいがベテラン達の新人いびりみたいなものだから、
1時間もすればベテランは全員帰ってしまって、残ってるベテランは俺一人。
先輩が一人でも残ってる限り新人は帰れない暗黙のルールがあったんだけど、
ただでさえ休みが貰えない新人を見て可哀想になったので、さっさと帰らせる事にした。
863 :862:2012/08/20(月) 12:56:35.90 ID:JkHQcFYY0
俺は昨日確認するのを忘れてた発注書を書く仕事が残ってて、新人全員を見送った後、
店の中をぐるりと見渡して、足りない物をリストアップしてた。
いつもはBGMを流しておく店内も今はシンと静まり返り、照明も俺だけだから必要最低限。
勿体ないからと空調を切った後は、じめっとした空気が店内に篭ってる。
天井近くまである大型の商品棚を見上げながら、店販のシャンプー、雑誌…とチェックしていき、
しばらくは足りない物をメモ帳に書く音だけが聞こえたんだけど、それが終わってボールペンを止めた瞬間、
ズルっと足下で何かが擦れる音がした。
反射的に目線を向けると、散らばった髪の毛の束を踏んでいた。
誰かが掃除中に掃き忘れたのかな、なんて思ってまたメモ帳に視線を戻したけど、
すぐにそれは有り得ないことに気付いた。
この場所に立ち止まってから少なくとも2~3分は経過してて、なおかつ一回も足の置き場所を変えていない。
なのに何で音がするんだ。
864 :862:2012/08/20(月) 12:57:25.00 ID:JkHQcFYY0
焦って再度視線を下に向けると、最初に見たときは無かったはずの毛束が増えていた。
慌てて一歩後退すると、ズルっと音を立ててその毛束がついて来る。
二歩三歩と後退してもズルズルとついてきて、
加えて髪の毛をためておくゴミ箱から毛束がドサドサとこぼれだし、それに続き始めた。
絶対にこんなこと有り得ない、これは夢だと思いながら、
どうにかして逃げようと踵を返し、出口まで走り出そうとした瞬間目に入ったのは、
髪の毛に覆われ、照明に照らされぬらぬらと真っ黒に光ている出入り口の扉だった。
本来だったら外が見える筈の大型のガラス窓も全部真っ黒だった。
あ、これはもう駄目なんだ、と思った瞬間右足首をギュッと掴まれる感触がして、そのまま勢い良く引倒された。
とっさに出た両腕で、顔面から床に激突するのは回避出来たものの、
グイグイ引っ張られる右足の痛みがもの凄くて、いっそ強かに頭を打ち付けて気を失いくらいだった。
ああもうこれで死ぬんだ!と思った瞬間、ゴッという音と共に地面が揺れた。
865 :862:2012/08/20(月) 12:58:29.66 ID:JkHQcFYY0
遠目に見える商品棚からシャンプーや雑誌が勢い良く転がり落ちてて、
そこでようやくこれは地震なんだって気付いたんだけど、
未だ足は引っ張られて店の奥に連れて行かれてるし、地震だしで大パニック。
必死で祈りながら地震も怪奇現象も収まって欲しいと目を瞑って耐えてた。
ガラスが割れる音や何かが転がってく音がやっと収まった…と思って、
そっと目を開けてみると、その怪奇現象以上に信じられないことが起きてた。
俺の周りだけ何も無かった。
出入り口のガラス、大型のガラス窓は砕け散ってる、観葉植物の鉢は割れてるし、
店販の商品なんか至る所に転がってた。
さっきまで俺が立ってた場所は商品棚が倒れてる。
でも俺の周りだけ、俺を避けているみたいにガラスも何も無くて、俄には信じられなかった。
気付けば髪の毛に掴まれてた足は自由になってて、これ幸いとばかりに割れたガラス窓から逃げ出した。
それが去年の3/11、東日本大震災の日。
店から逃げた後は周りの惨状に圧倒されっぱなしで、深く考える事も出来なかったけど、
今考えるとあの髪の毛は俺を助けてくれたんじゃないかと思ってる。
死ぬかと思うくらい怖い思いをしたし、
俺をどっかに連れ去る途中で地震があって、結果的に助けたみたいになったかもしれないけど。
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