後味の悪い話 その91より
989 :本当にあった怖い名無し:2008/08/29(金) 11:09:31 ID:naWwEUS20
先日、姉夫婦が引越しをするので、子供を2日間預かった。
小学校4年生の双子の姉弟で、姪は小さい頃からマセていたが、甥も口が達者になってきた。
とは言え、叔父バカだがものすごくかわいい。
プールに連れて行って、その帰りにちょっと遅い昼食をとることにした。
給料前で金もなかったので、学生の頃よく通った喫茶店へ行った。
夫婦2人で切り盛りしている店で、格安で大盛りのランチを出してくれる店だった。
料理をしない自分でも、手間のかかることの分かる料理がでてくる。
久しぶりに寄ったのだが、おじさんもおばさんも自分のことを覚えていてくれた。
子供たちは決してオシャレとは言えないレトロな内装を訝しげに眺めている。
「ここの料理、本当にうまいんだよ」と言うと、「へぇー」と意外そうな顔をした。
オムライスを3つ頼んだ。トロっとしたタマゴに手作りのデミグラスソースがかかっている。
おじさんは「なつかしいねぇ」と言いながら、
昔よく出してくれた大盛りのサラダとエビフライとクリームコロッケ、一口カツの盛り合わせをサービスしてくれた。
会計時に「俺もう社会人ですからちゃんと払いますよ」と言うと、
おばさんは「社会人になっても息子みたいなものだからいいのよ」と言ってくれた。
腹も気持ちも大満足で店を後にした。子供たちも喜んでくれているように思った。
帰りの車内で子供たちに「どう?うまかった?」と聞くと、
姪はニコニコしながら「うん、すごくおいしかった」と即答した。「俺に気を使ってるな」とは思ったけど。
すると甥が「おいしかったよ。だけどねー・・・」と言葉を濁した。
991 :本当にあった怖い名無し:2008/08/29(金) 11:10:31 ID:naWwEUS20
甥「この前食べた○○黒豚のソテーの方がおいしかったよ」
姪「あー、おいしかったよね。あと空豆のビシソワーズと○○の○○(聞き取れない)」
俺「・・・何それ?」
姪「有機農法でつくった空豆を裏ごしした冷たいスープだよ」
甥「○○黒豚は育てるのに時間もえさ代もかかるブランド豚なんだ」
姪「有機野菜は何も甘くておいしいんだよ。土から改良したんだって」
甥「○○ってお店のシェフがつくってくれたんだ」
俺「そんなもん食ってるんだ」
甥「給食で出るんだよ。お店で食べるとすごく高いんだって」
俺「・・・・・・」
翌日、姉にその話をすると、「困るでしょ?舌が肥えちゃって・・・」と苦笑いをしている。
姉によると、学校で3ヶ月に1回『食育』という授業が給食の前にあるらしい。
食べ物の大切さや、作るときの苦労、手間隙かければこんなにおいしいものが作れるという趣旨の話を、
農家や料理人から直接聞いた後、
地元の有機野菜やブランド肉、近海魚を使った給食が出るのだという。
学校もかなり力を入れていて、一見いい教育のようにも思えるのだが、
『食べる人の為に愛情をこめて作る』とか、『安い材料でも工夫しておいしく作る』といったことは教えていない。
姉のように思っている母親も少なくないのだが、
女性は自分の料理の腕や懐事情にも関わることなので言いづらいみたいだ。
話終わると、姉がはっと気付いたように「まさかその話、お店でしたわけじゃないよね?」と言った。
「違うよ、帰りの車の中」と言うと、「よかった、以前近所のお店でその話されて・・・」とほっとした顔をしたが、
自分は、もしあの店でそんな話をされたら・・・と思うと、何とも言えない嫌な気分になった。
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