死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?102より
683 :本当にあった怖い名無し:2005/07/07(木) 01:24:40 ID:SJgmDh1o0
あれは、俺が就職してから1年位経った頃だったかな。
仕事になれて、先輩とも気兼ねなく話せるようになって、丁度ペーペー脱出したって頃。
俺は世間一般で言う所の、害虫駆除業者に勤めてたんだわ。
コレ言うと結構馬鹿にする奴多いけど、誇り持ってやれる仕事だったよ。
自分で言うのもなんだけど、生活環境を守る正義の味方みたいに感じてた。
駆除が終わった後にお礼言ってもらえると、物凄く達成感があったし。
まぁともかく、そんな俺が体験した話。
俺らの仕事の半分かそれ以上は、一般住宅じゃなくて、レストランだとか事務所だとかの駆除だった。
そうすると日中は人が働いてるわけで、仕事時間は自然と夜から朝方になる事が多かったんだわ。
そんでもってその日は、俺一人で居酒屋のネズミ駆除にあたる日だった。
こういう仕事って、普段は複数人でやるのが原則なんだけど、
その居酒屋の規模が小さい事もあってか、初めて俺一人に任せてもらえたんだ。
一年間頑張ってきてやっと俺も認められたかって思って、本当に嬉しかったなぁ。
2時くらいに現場入りして、その店の店長に鍵を受けとる。
仕事が終わった後に、自分で鍵かけて帰る訳だな。
誰も居ない店内、外はあいにくの雨模様だった。
1人残って、ネズミ捕り用の粘着シートをせっせと設置。
何処にでも置けばいいって物じゃあないから、一応気を使いながら50枚くらい設置し終わった時だ。
妙な音が聞こえてるのに気付いた。
遠くから聞こえる水道の音、という感じ。
684 :本当にあった怖い名無し:2005/07/07(木) 01:24:56 ID:SJgmDh1o0
何となく腕時計を確認すると、3時を廻った所だった。
一時間以上作業してたのに、今まで気付かなかったなんて変だな、
なんて考えながら、音の発信源と思われる厨房に向かったんだ。
営業中は開けっ放しにしてあるだろう金属製のドア。
それを開けると厨房なんだけど、俺は中々開ける事が出来なかった。
なぜなら、厨房に近づくにつれて、水音に混じって妙な物音が聞こえてきたからだ。
「ごそごそ」って擬音がそのまま当てはまるような、怪しげな音。
泥棒か幽霊かって、びびっていた訳だ。
それでも、このままじゃ埒が明かないと思って、一気にドアを開けた。
もし中に人がいたら、ビビって逃げ出すぐらいの勢いだ。
ドアが開け放たれた瞬間、水音も怪しい物音もピタリと止んだ。
けど、真っ暗で何も見えない。
壁を手探りして蛍光灯のスイッチを押すと、独特の音を響かせながら辺りを白く照らされた。
明るくなった部屋は、ぱっと見では何の異変も感じ取れない。
左から右に徐々に視線を動かして部屋を注視した。
やっぱり特におかしなところは無い。
ただ、水道から僅かに水が垂れているだけだ。
10秒に一度程度のペースで水滴が落ちて、空虚な音を立てている。
音の原因は別にあったのかもしれない、と思った。
蛇口を閉めようと近づいたその時、凄い勢いでドアが閉まった。
何のことは無い、自動的に閉まるタイプのドアだったというだけの話だ。
それでも俺は、口から心臓が飛び出る勢いでビビッた訳だが。
685 :本当にあった怖い名無し:2005/07/07(木) 01:25:16 ID:SJgmDh1o0
ほう、とため息一つ付いて蛇口をひねる。
小気味良い音を立てて水は止まり、最後の一滴がシンクにピチャリと落ちた。
もう一度ため息をついて厨房を後にする。
仕事の続きをやんないとな、なんて思いながら。
先ほど勢い良く閉まった金属製のドアを、力任せにグイと開ける。
黒い物が目に入った。
最初俺は、こんな所に壁なんかあったかなって思った。
それがあんまり大きいから分からなかったんだ。
反射的に上を見て気付いた。
大きなドア枠の縦横に収まらないほど巨大な、長髪をばらつかせた黒衣の女だったんだ。
叫び声を上げる間も無く、突然に辺りは真っ暗闇になった。
停電だ。
瞬間、俺はパニック状態になった。
逃げ出そうにも前には大女、後ろの厨房は行き止まり。
情けない話だけど、その場にしゃがみこんで、頭抱えて震える事しか出来なかったよ。
686 :本当にあった怖い名無し:2005/07/07(木) 01:26:22 ID:SJgmDh1o0
何分経ったときか、もしかしたら一時間ぐらいしてからか、蛍光灯が出し抜けに灯った。
恐る恐る前を見ると、大女はもう居ない。
ドアは開きっぱなしになっていて、自動で閉まるタイプのもではないらしいと分かった。
ならば先ほど勢いよくドアが閉まったのは・・・・・・再びぞっとしてしまう。
辺りを警戒しながら作業場へ戻ったものの、仕事が手に付くはずも無い。
会社の車に乗って明るい繁華街へ行き、そのまま夜を明かした。
車内のライトを全開にしてたもんだから、バッテリーも上がってしまった。
後日、会社の上司にはこっ酷く叱られたが、あの空間に居る事に比べたら何でもなかったね。
今も害虫駆除の仕事は続けてるけど、別段おかしな体験はしていない。
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